八話収録。
火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵を恐れて、盗賊たちは彼を「鬼の平蔵」、あるいは「鬼平」と呼んでいる。
平蔵が、盗賊や悪人を捕縛するのが主な話。
最初はかなり取っ付き難いと思う。
しかし、話の中で少し名前が出てきた者や、偶然再会して挨拶だけして別れていった者など、
そういった間単に登場した人物が、後に、重要な役で登場したり、その人物視点で話が描かれたり。
そのような感じでどんどん話が広がっていく。
展開も様々、登場人物も様々と、少し最初は敷居が高いが、気がつけばつい読みふけってしまっている。
そんな作品。(2005/11/26)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
かの有名な宮本武蔵の話。
ある意味、伝記と言ってもいいだろう。
構成としては、武蔵の生い立ちから、兵法者として各地を旅し、
そして様々な強者と戦い、没するまで。
彼の生涯をこの1冊で描いている。
要所要所でエピソードが語られる感じ。
彼の性格や思想など、またライバル達についても、史実の通りに描かれているようだ。
うまくまとめられているし、しっかりとした文。
評価7でも良かったのだが、話が面白いかを評価の基準としているので、6とした。(2005/11/30)
総合評価:★★★★★ ★☆☆☆☆
源義経の人生を描いた歴史小説。
細かに書かれているわけではないので、展開は早い。
どんどん話が進んでいくので、のめりこみやすいと言えばそう。
しかし、多少淡白な感じはする。
書いてある内容は濃かったりするのだが。
有名な、鞍馬天狗との修行や、弁慶との決闘などが、省略されているのはどうかと。
那須余市の話はそこそこ書かれている。
歴史小説なので史実通りに書かれていると思うのだが、私の知識と異なる部分があったり。
例えば、弁慶と出会った時には、既に名を牛若から義経と改めて数年経っている。
上巻は義経の活躍がほとんどないのは残念。(2006/01/18)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
上巻よりは細かく書かれている感じ。
序盤から、木曾義仲の軍勢を相手に義経が大活躍。
その後も、平家との戦いは、義経の策が面白い。
読み終えて、義経が哀れでしょうがない。
源頼朝が悪に思えてくる。
平家の面々のほうが好ましい。
全体を通して、やはり義経の魅力的な性格が光る。
情緒豊かなところ。
子供のようなところ。
政治感覚に疎く、平家のように情を好むところ。
なかなか読み応えがあった。(2006/01/18)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 上野駅で、浮浪者が次々と死んでいく。
死因は青酸中毒。
明らかに殺しである。
そして、犯人の手は一般人にまで伸び、若い女性がやはり青酸中毒で死亡する。
その後、駅長に”K”と名乗る人物から手紙が来る。
上野駅の乗客を人質に、8000万の身代金が要求される。
何故、8000万と中途半端な額なのか。
姿の見えない狡猾な犯人に、十津川警部が挑む。
こうあらすじを書いてみると、西村京太郎の作品にしてはややシンプルな感じがする。
今回は、乗客を無差別に人質にとっているイメージで、やや規模が大きな犯罪。
ただ、地道な捜査で犯人を追い詰めていく展開なので、推理のしようもない。
やや地味な感じがするが、そこそこ面白いことは確か。(2006/01/18)
総合評価:★★★★★ ★☆☆☆☆
タイトルや、本の表紙から、「一体何を読んでるんだ!」と友人に突っ込まれた。
まぁ、それはどうでもいい話。
短編2つと、単行本半分位の量の中編1つが収録。
タイトルは中編のもの。
この中編では、毎度お馴染みの十津川警部以外に、
西村京太郎氏の友人である山村美紗氏の作品に出てくる探偵、ミス・キャサリンが登場。
と言っても、この方の作品はまだ読んだことがないのでよく分からないが。
短編は両作ともに、なかなか味のある作品。
「EF63型機関車の証言」は、推理色が強く、なかなか頭を使うことになるかも。
とは言っても、やはり1冊丸々1つの話を詰め込んだものと比べ、どうしても簡単になってしまうのが残念。
まぁ、面白いことは面白い。(2005/11/17)
総合評価:★★★★★ ★☆☆☆☆
「念力で人を殺したら罪になるのか?」
さて、どうなるのか。
−− 超能力者として有名な田代は、自分を批判した大学助教授の殺人を予告。
田代が宣言した通り、助教授は死亡し、その後も次々と予言を的中させていく。
とまぁ、こんな感じで話は進んでいくのだが、いや、面白い。
特に、田代の予言に翻弄されていく世論、捜査陣。
しかし、真っ向から立ち向かっていく十津川警部。
序盤から、話の展開はある程度予想できると思うけど、
それが逆に物語にぐいぐい引き込まれる要因となっているのかもしれない。
田代の行動の動機とか、そういったものは部分的にしか推理は不可能だが、
中盤前後の展開はとにかくすごい。
続きが気になりすぎる。(2005/11/13)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
私が初めて読んだ西村京太郎の作品。
短編ミステリーが5本収録されている。
どの作品も実際にありそうで、どこか現実的ではない話。
強引な展開も多々あるけれども、短編ですからしょうがないか。
だが、きちんと登場人物の人物像が描かれている。
結構あっさりと読めるので、そこもポイント。
5作のうちでは、4番目に収録されていた「第六病棟の殺人」が個人的に一番良かった。
−−主人公は精神科医。
精神病に侵された4人の高校生達の治療を試みているものの、そこで思わぬ事件が…。
他の4作と違って、ある程度の推理も可能かと。(2005/11/11)
総合評価:★★★★★ ★☆☆☆☆
−− 「7年後に皆で再び集まって、故郷へ旅行しよう。」
青森県から上京してきたの7人の男女が、約束を果たすべく上野駅に集まる。
ところが、一人だけ列車の発車時刻に間に合わず、仕方なく出発する6人。
その少し後、上野駅のトイレで死体となって発見された男は、7人組の一人だった。
また、列車が進む中、6人の一人が行方不明に。
その一人は、水戸で水死体となって発見される。
今作も十津川警部が大活躍。
今回は、十津川の相棒の亀井刑事の古い友人の話が、離れたところで事件につながっているのが面白い。
次々と死んでいく7人組のメンバー。
明らかにこの中の誰かが犯人である。
彼らの行動も描かれるため、限られた人数の中から犯人を突き止めていくのは、展開が分かりやすく続きが気になる。
(2006/01/18)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
十津川警部の活躍する作品の第1作目。
−− 有名雑誌の記者・青木が取材で乗り込んだ寝台特急。
1号車両で出会った、茶色のコートの美しい女性と接点を持ったことにより、事件に巻き込まれてしまう。
西に向かう寝台特急で、日付が変わってほぼ0時、兵庫県三宮まで女性がいるのを確認。
次の糸崎駅までは4時間以上の間隔がある。
しかし、その日の午前11時、東京でその女性と思しき人物が水死体で発見される。
しかも、少なくとも5時間は水に浸かっていたという状態で・・・。
ほぼ犯人を断定した状態で進んでいく捜査。
犯行トリックの謎が、次から次へと謎を生む。
どんどんトリックの規模が大きくなっていく様子は、とても面白い。
そこそこ分かりやすいトリックもあるので、それが解かればますます面白い。
ただ、作中でも言われているが、犯行規模が大きくなるほどボロが出やすくなる。
全体的に見て、少し陳腐な感じがしてくるのは残念。(2006/01/05)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
列車ミステリーだが、主人公は十津川警部ではなく、ある私立探偵社の男、日高。
そういった意味で、他の作品とちょっと違う感じで面白い。
−−新婚旅行の途中、列車が目的地・高千穂に着く前に、妻が姿を消してしまう。
すぐに見つかると思ったが、警察と協力して捜しても行方が分からない。
仕事を辞めて妻を本格的に捜そうと、探偵社へ辞職届を出しに戻ると、
受付をやっていた妻が最後に受けた依頼内容が、現在の日高の境遇とそっくりだということが分かる。
依頼者は結婚したばかりの女性で、やはり新婚旅行の最中に、目的地・出雲に着く前に、
旦那が姿を消してしまったとのこと。
ただの偶然とは思えないこの依頼が、妻の捜索の手がかりになると思った日高は、
この依頼を受け、依頼者の女性と共に出雲に向かう。
と、ちょっと出だし部分のあらすじが長くなってしまった。
これ以外に、筑紫という場所も関係してくる。
高千穂、出雲と合わせて、日本の三大神話に関係する地。
この辺に注目して読んでいくといいかも。
最後、終わり方も私的に満足。(2005/11/22)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 福井県の東尋坊で自殺しようと、特急「スーパー雷鳥3号」に乗った佐々木は、車内で偶然、
見知らぬ男に助けを求められる。
男は佐々木に封筒を渡すと、そこで息絶えてしまう。
その封筒には手紙とキャッシュカードが入っていた。
自分に何かあった時のために、男はその封筒を肌身離さず持っていたらしく、
手紙には、男が命を狙われていること、疑いのある者達の名前、キャッシュカードの暗証番号、復讐の依頼が、
書かれていた。
こんな感じで始まるミステリー小説。
推理もある程度可能。
何故、赤の他人の佐々木に復讐を依頼したか等、そういった不思議な点もちゃんと説明あり。
西村京太郎の作品でお馴染み、十津川警部が大活躍。
ですが、今作は佐々木も第2の主人公としていいかと。
自殺を考えていたはずの、佐々木の犯人探し。
佐々木の怪しい行動に翻弄される十津川警部達。
2人の視点から進んでいく物語。
これが話に深みを与えてくれている。
読者は二人の情報を持ちながら読み進めていくわけだが、この二人のすれ違いなども面白い。
最後の最後まで謎が続き、気が抜けない。(200511/16)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
−− 特急「つばめ」で恐ろしいことが起こる予感がする。
そんな内容の、匿名の手紙が警視庁に届けられる。
差出人を突きとめ、訪ねてみると、ちょうど少し前にその人物が殺されていた。
十津川警部の活躍する列車ミステリー。
「つばめ」が昔に走っていた、あるイベントの日が事件と関係があるようだ。
そんなわけで、列車に乗り込む十津川警部と亀井刑事。
十津川警部達と、過去の話の二視点から話は進んでいく。
あいかわらず読みやすい。
が、今回は終始「つばめ」内外の話。
やや物語の範囲は狭い。
多少強引な展開もあるが、時間の迫っている状態での話の展開の進みはドキドキ感がある。
やや意外性に欠けるかもしれないが、面白いことは面白い。(2005/12/29)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
−− 男に裏切られ、多額の借金を背負わされた風見ゆう子は、自殺するべく北海道へ向かう。
途中「北斗1号」で出会った謎の男は、ゆう子の自殺願望を見抜くが自殺を止める様子はない。
自分の旅行に付き合ってくれれば、自殺するのに適した場所へ案内すると男は言い、また100万円を差し出す。
その男と行動を共にするうちに、何故か行く先々で殺人事件が起こる。
男と別れ、自殺しようと、流氷の浮かぶ網走の海へ飛び込んだ時、男2人がそれを阻む。
男達は警察で、ゆう子は殺人事件の容疑者として手配されてしまっていた。
十津川警部が活躍する話で、今回は冤罪と正義感がテーマ。
仕組まれた冤罪に対する、ゆう子の憤り。
読者は歯がゆい思いをするだろう。
性根の曲がった連中に人生を狂わされた人達。
そして、妙な正義感が、また数人の人間の人生を狂わせる。
これほど切ない話も、このシリーズでは珍しいのではないだろうか。
終わり方も賛否両論となりそう。(2006/02/13)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
十津川警部の活躍する作品の第2作目。
いきなり十津川警部の結婚から話が始まる。
−− 十津川警部は結婚し、妻の直子と北海道へハネムーンへ。
交通手段に飛行機、最終夜間便、通称「ムーンライト」を選ぶ。
これは新婚夫婦を主に対象にしたもので、多くのカップルが利用している。
ハネムーン中、十津川達が偶然出会った新婚夫婦が、行方不明になる。
数日前に別の新婚夫婦が行方不明になっていたのだが、消え方がそっくりだった。
結婚という、十津川警部の私生活に踏み込んだものも話になってくるので、これがまたいい。
妻の直子の一言が捜査に役立ったり。
展開的には、謎が全く分からぬまま事件が進んでいく。
いつ解けるのかと期待しながら読み進んでいくのもいいのだが、ちょっとストレスのたまる展開かも。
最後の締め方が、ちょっと微妙だったのが残念。(2006/01/07)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
まず、このタイトルがうまい。
ロールプレイングゲーム。
ロールは役、役を演じてプレイング。
インターネットのチャットで、赤の他人が家族を作る。
擬似家族。
お父さん、お母さん、姉と弟。
それだけで、まず役を演じていることになる。
それ以外にもいろいろと意味がある。
例えば、主人公の武上が、代役で取り調べをするのも、これは役を演じていることになるのかもしれない。
でもやはり、最後のシーンのインパクトが相当あったかな。
内容の7割程は取り調べという、ある意味異色の作品。
読んでるうちに引き込まれていく。(2006/02/18)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 時期も場所も方法もバラバラに、自殺あるいは事故で亡くなった3人の女性。
3人目の女性は、何かに追い立てられるように赤信号の道路に飛び出しタクシーにひかれた。
だが、事故の目撃証言もなく、過失の疑いによりタクシーの運転手は逮捕される。
運転手の甥であり、今は彼の家族の一員である高校生の守は、苦しむ家族を助けるべく、事故について調べ始める。
次第に、3人の女性の死が何者かに仕組まれたことであると知り、事件に深く巻き込まれていく。
事件に関して主に話が進んでいくが、それだけではない。
守の過去、守の開錠能力など、面白い要素はいくらでもある。
魅力的な登場人物も多く、4人目の女性、守を遠くから眺める謎の男など、守以外の視点がより謎を深くする。
事件の真相はやや不満だが、それが最後の締めに重要な意味を持たせているのは驚かされた。(2006/01/21)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの8作目。
今作の主人公は、笹木という男。
舞台は郊外の別荘。
館物ミステリーといった感じ。
そこで同時に起きた2つの殺人事件。
1つだけならあるいは簡単なトリックのように見えるかもしれないが、2つ同時に事件を起こすにはどうすればいいのか。
様々な推理が見所かな。
森作品の話は、いかに読者をミスリードさせるか。
間違った推理、間違った解答を出させるか。
そんな罠がいたるところに張り巡らされていたりします。
今回は特にそれがすごい。
だからこそ、こんな曖昧なレビューになってしまった。
じっくり読んで、驚いてほしいと思う。(2006/03/06)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 1年に1度起こる、ある規則性の殺人事件。
桜鳴六画邸の主・小田原静子宛てに、今年のターゲットが彼女という内容の脅迫状が届く。
アパート・阿漕荘に住む探偵・保呂草は彼女の護衛を引き受け、同じアパートの住人・小鳥遊練無と香具山紫子と共に屋敷を監視する。
が、衆人環境の密室の中で静子は殺されてしまう。
瀬在丸紅子達が活躍するVシリーズの第1弾。
紅子、保呂草、練無、紫子の4人は麻雀仲間であり、この4人が主要人物。
各々、個性の強さは抜群。
彼女らを好きになれるなら、このシリーズをより楽しめるだろうが、もしかしたら好き嫌いが分かれるところかも。
今回の事件のキーワードは、やはり規則性。
桜鳴六画邸のまわりに出没する黒猫の名前はデルタ。
この猫の名前が一応ヒントになっているが、気付けない人も多いだろうし、気付くことができない人も多いだろう。
最初の事件ということで、トリック自体は大した事はない。
曲者にご注意。(2006/03/18)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 天才奇術師・有里匠幻、世紀の大脱出。
そのショーの最中、衆人環視の中、有里匠幻が殺される。
さらに、葬式の後、その遺体が霊柩車から消失する。
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの6作目。
今回は「マジック」が第1のテーマ。
有里匠幻は死してなお脱出を遂げた。
そうした演出に、作中の人物達だけでなく、我々読者も驚かされる。
こうしたインパクトがすばらしい。
第2のテーマは「名前」。
名前にこめられた意味、その解釈について犀川の意見がまた独特。
よくこんなこと考えるなぁと思う。
本作では、一般的なマジックのいくつかがタネ明かしされている。
本当かどうかは分からないが、なかなか興味深い。
人によっては感心するかもしれないが、人によってはそのタネを不満に思うかも。
ちなみに本作は奇数章しかない。
同時に別の事件が起こっており、それは次作「夏のレプリカ」で描かれる。(2006/02/26)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 腹部に文字の様な切り傷が残された半裸の女性が遺体となって発見される。
現場は密室であり、同様の手口で次々と犠牲者が・・・。
人気ロック歌手・結城稔の曲、JACK THE POETICAL PRIVATEの歌詞に、犯行状況を示す様な単語が複数含まれている。
そのため、彼を容疑者として、警察は捜査を進めていく。
建築学科の大学生・西之園萌絵は、持ち前の好奇心と、警察とのコネ、そして容疑者・結城稔と知り合いということから、
事件に首を突っ込んでいく。
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの4作目。
今回の事件は、特に専門的な内容が多い。
特に建築学。
密室等の謎的な部分が、犀川達専門家によって次々と明かされていく。
積極的なのは萌絵だが。
こうした専門性については、私は単純に面白いというか、感心させられる。
私自身が躍起になって謎を解こうとしているわけではないからだと思う。
逆に、自力で解くのは、建築等を専門に学んでない限り、やや難しいのかもしれない。
事件も十分に面白い内容。
人物や、あらゆる物事の対比など。
だが、今作の見所は、なんといっても犀川と萌絵の関係の進展かもしれない。
そこんところ注目。(2006/02/04)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
−− M工業大の大学院生の女性が絞殺死体となって発見される。
その女性は密室となった研究室で殺されており、鍵はコピーの難しいものが3つのみ。
彼女が会う約束をしていて、さらに鍵を持っている男・寺西高司に嫌疑がかけられる。
次の日の朝、模型交換会の会場で、寺西が昏倒しているのが発見される。
首なしの女性死体と共に、密室となった一室で。
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの9作目。
同じ時間帯に起こった2つの殺人事件。
しかも両方とも密室であり、事件を起こせる人物は限られてくる。
明らかに怪しいからこそ、寺西が事件を起こしたのかどうか疑わしい。
その辺りがキーポイント。
さて、模型交換会。
これは明らかにオタク系のもの。
こういった舞台の生々しさもがすごい。
いや、実際の現場はどんなものか知らないが、きっとこんな感じなんだろう。
模型に加えて面白いのが人間関係。
犀川の古い友人が、萌絵の従兄弟だったり。
2作目に登場した犀川の友人で同僚の喜多も、かなりの出番がある。
ボリュームもあり、単純な物語としても面白いのに、加えて意外な展開。
個人的にはかなり楽しめた。(2006/03/06)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
−− 天才工学博士・真賀田四季。
彼女と同僚の研究者が住み、研究を行う研究所のある孤島。
そこにゼミのキャンプでやってきた、N大の助教授・犀川と学生・西之園萌絵。
二人が研究所を訪れると、所内はある騒ぎが起こっていた。
真賀田博士との連絡が数日間とれなくなっていると言う。
所内はコンピュータとネットワークで管理されている。
セキュリティも万全で、許可された人しか部屋には入れない。
犀川達が真賀田博士の部屋の前でで話をしていたとき、突然部屋のドアが開く。
そこから現れたのは、両手両足が切断されたウェディングドレス姿の女性の死体だった。
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの1作目。
森博嗣の作品は、世間では「理系ミステリー」と称されているらしい。
確かに、やや専門的な用語や表現が使われていたりする。
もちろん説明があるが、やはり元から知識のあるのとそうでないのでは、作品の感想は変わってくると思う。
今作では、パソコンの知識、特に基礎の部分に詳しいと一層面白く読めると思う。
事件のトリックや、題「すべてがFになる」の意味など、私の様な理系人間にはある意味感動的なぐらい衝撃だった。
ヒントがしっかりと与えられているし、謎が明かされた時は唸るしかない。
ハイテク研究所を舞台とし、近未来な感じが新鮮。
ややSFっぽいか。
キャラが理系人間ばかりなので、どことなく理屈っぽいのも面白く、それでいて皆個性がしっかりしてるのが素晴らしい。
やはりなんと言っても、一般的な小説とは雰囲気が異なる。
そこを好きになれるかで評価は分かれそう。
私はかなり気に入った。
特に、トリック部分などがプラス評価。
本来であれば評価は8ぐらいだと思うが、私的な贔屓として9とさせて頂く。(2006/01/27)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
−− シェルターとして作られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間。
そこでの生活によって、シェルター機能を確かめるために集まった6人。
仕組まれた罠か、システムが暴走。
6人は閉じ込められ、そして一人、また一人と殺されていく。
そして残ったのは二人。
アガサの「そして誰もいなくなった」を意識してるのは間違いない。
だからこそ興味の惹かれる話。
盲目の天才科学者・勅使河原準と、そのアシスタント・森島有佳。
二人の視点で、交互に話が進んでいく。
冒頭で明かされるのだが、実際には両者とも偽者。
弟だったり、双子の妹だったり。
勅使河原も、実際目は見えるのに盲目の振りをしてるわけです。
よって殺人の容疑者から外されるんだが・・・。
こういった展開がなんとも言えん。
かなり面白い。
さて、終盤。
そこまでは、この作品はかなりのものだと思っていた。
けど、さらにその先。
ここは賛否両論だろうなぁ。
かなり極端な評価になると思う。
実際、自分的には駄目だった。
その点だけが残念。
これはやっちゃいけないだろ〜〜、と思ってしまう。
そこに至るまでは良かったと思えるので、この評価にしておく。(2006/02/18)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
短編集第2弾で10話収録。
S&Mシリーズ終了後の刊行だが、その次のVシリーズを先に1冊読むのがオススメ。
Vシリーズの短編も1話収録されている。
だが、宣言されているわけではないので、どれがそうだか分からない。
「気さくなお人形、19歳」という作品がそれだが、この話の主役が、Vシリーズの登場人物だ。
S&Mシリーズの短編も2話収録。
それ以外は、ミステリーに限らず様々な話。
面白いのもあるが、「有限要素魔法」などはさっぱりな内容だった。
誰か解説してほしい。
オススメは、S&M短編の「石塔の屋根飾り」かな。
犀川が皆に推理問題を出すというもの。
こういう展開は今までになかったので、それが面白い。(2006/03/11)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
−− N大の最新設備、低温度実験室での実験を見学に来た犀川助教授と女学生・西之園萌絵。
実験の打ち上げを実験室内で行っていたが、実験に携わっていた男女二人の姿が見えない。
実験室内にある準備室には何故か鍵がかかっていた。
皆で二人を探すのだが、何処にも見つからず、最後に準備室を確認してみると、そこで二人は遺体となっていた。
準備室には非常口があるが、内側からしか開けられない。
実験中から打ち上げの後まで、準備室の前は大勢の目が向けられていた。
衆人環境と密室の謎に、犀川と萌絵が挑む。
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの2作目。
実験の内容や会話の節々が、理系独特のそれとなっているのは相変わらず。
しかし、今回の事件の謎は普通の推理物。
そういった意味で、森作品特有の魅力は半減しているかもしれない。
しかし、犀川の推理の仕方はかなり面白い。
現実的に成功しそうな方法を模索する。
矛盾点のないことを第一とし、そうなった理由は後付け。
だから、謎は解けても動機が分からなかったりする。
最後はビシッと決めてくれる犀川だが、序盤はちょっと情けない感じ。
だけど何故か女性が寄ってくる。
そこにやきもきする萌絵。
そういうところも、話の面白いところかも(2006/01/30)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
−− 狼男が潜んでいると噂の薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれる屋敷。
そこで開かれた、紅子の友人の結婚報告パーティ。
ひょんなことからパーティに出席することになった保呂草。
そのパーティ中、屋敷内のオーディオルームで、参加者の一人がいつの間にか死んでいた。
しかも、その光景は異様。
衣服はボロボロ、死体が部屋中を引きずり回されたような血の跡。
そのオーディオルームへの入り口はパーティ会場のホールからのみで、衆人環境の密室だった。
瀬在丸紅子達が活躍するVシリーズの第3弾。
屋敷物、そして密室と、ミステリーのお決まりのパターンであるように思えるが、事件の真相はやや残念。
盛り上げるだけ盛り上げておいてそれかよ!って感じだ。
さて、オーディオルームには巨大な水槽があり、事件後、水槽の周りにだけ水びたしになっている。
また、部屋のソファの前の床に、丸い凹みがある。
この2つと、諸々のヒントから、密室の推理を導ける人も多いかもしれない。
それはいいんだけどね・・・。
最後のオチが・・・。
個人的に、序盤の保呂草の暗躍にはニヤリとさせられた。(2006/05/12)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
−− T大学大学院生の簑沢杜萌が、実家に帰省。
しかし、家族の姿はなく、杜萌は仮面の男に襲われる。
家族は、仮面の男の仲間2人に誘拐されており、目的は金。
杜萌も家族の元へ連れて行かれるが、その場に着くと、仮面の男の仲間が死んでいた。
さらに、杜萌の兄が理由も分からず失踪していた。
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの7作目。
といっても、この2人は今回脇役。
萌絵の親友・簑沢杜萌視点で、話が展開されていく。
ちなみに本作は偶数章のみ。
前作、「幻惑の死と使途」と同時期に起こった事件で、時系列に限っては章の通りに進んでいく。
さて、一見わけのわからない事件。
ただの金目当ての誘拐と思いきや、誘拐者が仲間割れでもしたかのように、お互いの銃で撃たれて死んでいた。
なぜ死んでいたのかが1つの謎。
密室殺人でもないので、可能性がありすぎて逆に分からない。
そして、杜萌の兄だけが誘拐されておらず、しかし、行方不明に。
彼は盲目のため、一人でどこかへ行けるとは思えない。
事件に関係あるのか否か。
これもまたよく分からない謎。
本作は、単純な読み物としてみてみると面白いと私は思う。
いつもと違った視点。
いつもと異なる曖昧な事件。
でも、意外性は相変わらず。(2006/02/26)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 練無が期間限定でアルバイトをしている蓼科のペンションに、遊びに来た紅子、保呂草、紫子。
ペンション近くの私設博物館「人形の館」では、「乙女文楽」のステージが催されている。
演劇中、突如倒れる人形役。
そしていつの間にか殺されていた操り役。
衆人環視の中で起こった殺人と、2年前に不可解な死を遂げた悪魔崇拝者との関係は?
瀬在丸紅子達が活躍するVシリーズの第2弾。
今回の話で一番気になるところは、やはり保呂草の一挙一動だろう。
前作、「黒猫の三角」を読んでると特に気になるところ。
だからこそ、作品は順番に読むことをオススメする。
殺人のトリックに関しては、特に意外性はない。
ただ、殺人を行う背景がちょっと特殊かな。
今作は、保呂草に関すること、そして祖父江七夏という人物の登場のための話といってもいいかもしれない。
(2006/04/30)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
−− 香山家に伝わる2つの家宝「天地の瓢」と「無我の匣」。
「無我の匣」と呼ばれる箱の鍵は、「天地の瓢」と呼ばれる壺の中。
壺の入り口は狭く、鍵は入り口よりも大きい。
しかし、箱を開けるためには、どうにかして鍵を取り出さなければならない。
50年前、香山風采は息子の林水にこの謎を残し、密室の中で謎の死を遂げる。
そして今度は、林水が似た様な形で死亡。
自殺か?他殺か?
密室、消えた凶器、そして2つの家宝のトリックは?
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの5作目。
なんと言っても2つの家宝のトリック。
物理的には明らかに取り出すことのできない鍵。
これだけで相当のインパクト。
50年間、誰にも解けたことのない謎を解けるかと聞かれて、「解けますよ」と簡単に答える犀川。
この飄々とした独特の性格。
意味なしジョーク、ひねくれたギャグなど、相変わらずいい味を出している。
そんな犀川を振り回す萌絵。
今回は、この2人の関係に、周りがやたらと騒いでるのが面白い。
ただ、事件や家宝の謎は、やはり専門的知識が必要かも。
普通じゃ絶対に解けない。
凶器の隠蔽でこんなことが出来るとなると、犯罪が起こりやすくなるかも・・・とか考えてしまった。(2006/02/04)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 著名な画家・関根朔太が隠し持つとされる美術品、「エンジェル・マヌーヴァ」と呼ばれる短剣を手に入れてほしいと依頼された保呂草。
依頼人は、ジャーナリストの各務亜樹良。
世間では男性と思われているが、実際は素性の知れない謎の女性。
同時期に開催された航空ショーのパイロットに、関根朔太の娘・関根杏奈がいた。
各務は取材と称して2人乗りの飛行機の1つに同乗させてもらうが…。
アクロバット中、パイロットの男の胸に、いつのまにかナイフが突き刺さっていた。
瀬在丸紅子達が活躍するVシリーズの第5弾。
もちろん各務が殺したわけではない。
が、捕まって素性を詳しく調べられるわけにはいかない各務は、保呂草に助けを求め逃避行。
また、世間は狭く、練無は関根安奈の後輩であり、彼女からもらったチケットでショーを見に来ていたいつものメンバ。
もちろん、事件の担当は林と七夏達。
出来すぎの設定な気もするが、それだけにニヤリとさせられる。
航空中+衆人監視の密室ということで、非常にインパクトのある事件ではあるが、そのトリックは・・・・・・まぁ、こんなもんだろう。
それよりも、各務亜樹良といい、今後のための伏線がたくさん張られた感じかな。
トリックはともかく、物語は面白いと思う。(2006/06/13)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
短編集1。
11編収録。
不条理系の話が多いというか、ミステリーに限らず様々なジャンルがあるが、テーマがやや曖昧なものも多い。
何が言いたいか分からなかったり、きちんと完結せずに終わったり。
それはそれで面白い。
私の読解力不足かもしれないが。
S&Mの外伝的話もある。
ミステリー研がある意味大活躍。
読み応えはあるのだが、ページのわりには話が11編も収録されているため、内容が淡白だったり。
軽く読むのが妥当。
それにしても、「増毛殺人事件」には笑った。(2006/02/10)
総合評価:★★★★★ ★☆☆☆☆
−− 紫子が応募し、一緒にクイズ番組に出演することになった紅子と練無。
女子大生編と称されており、もちろん練無は女装。
保呂草もちょうど仕事の関係で、4人は上京しN放送へ。
クイズ番組のリハーサルの休憩時間、銃声が鳴り響く。
音のあった部屋から出てきたアイドルの少女。
練無はその少女とともに失踪。
そして、部屋で殺されていたプロデューサ。
事件は、20年前に死んだ、プロデューサの恋人に関係が・・・?
瀬在丸紅子達が活躍するVシリーズの第4弾。
とりあえずタイトルに突っ込んでおこうかな。
サブタイトルが、”You May Die in My Show”
うまいなぁ。
タイトルを「夢で会いましょう」と呼んでも、ちゃんと話にしっくり来る気がする。
うまいなぁ
まず設定が面白い。
シリーズを読んでいる読者なら承知のはずだが、練無は髪も長く背も低く、一見すると女の子。
さらに女装が趣味というかなりの個性派。
その彼が女子大生としてクイズ番組に参加しようとしているのだから、そうした話しの展開だけでもなかなかの読み応え。
逆に、事件に関してはあまり魅力を感じなかった。
はっきり言ってしまえば、推理小説としては失格かもしれない。(2006/05/22)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの10作目にして一応の完結編。
今作では、とうとうあの人の登場。
真賀田四季。
1作目に登場した後は出番もなかった彼女だが、何故か圧倒的な存在感。
演出のせいかもしれないが。
並みの本の2冊分は優にありそうなくらい、ものすごいボリュームにも関わらず、
話全体の日数としては3日程度。
描写の細かさや、小さなイベントの多さなどが主かな。
だからこそ話の内容が語りにくい。
ゼミ旅行の数日前に、友人とともに現地に訪れた萌絵。
そこは、萌絵の昔の許婚が経営するテーマパークのような場所。
そこで四季と出会う。
そして彼女はこう言った。
「人が死にます。」
事件そのものは、あまり面白くはなかった。
やはり四季に関わる多くのイベントが面白いところか。
とりあえずS&Mシリーズとしては最後の作品だが、短編や別の作品で、
犀川や萌絵や他の皆が登場する模様。(2006/03/10)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 天才とされる数学者・天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。
12年前、博士は、館の前にある銅製の巨大なオリオン像を一瞬にして消してしまったという。
しかし、翌朝になるとオリオン像は元の位置に。
犀川助教授と西之園萌絵は、その館で開かれたパーティに出席するが、萌絵の希望もあって、
博士は再びオリオン像を消してしまう。
翌朝、再度出現したオリオン像の足元で、博士の息子の妻・律子が遺体となって発見される。
犀川と萌絵が活躍するS&Mシリーズの3作目。
今回の謎は主に2種類。
事件に関するものと、オリオン像のものとである。
オリオン像のトリックは、意外と閃きやすいかもしれない。
この2種の謎がうまく絡み合って事件が構成されているのがうまい。
天王寺翔蔵の言った事。
物事の「定義」について。
「定義」するのは自分である。
分からないことがあるとすれば、それは自分の先入観によるものである。
この考え方がとても面白い。
これのせいで、話が複雑になってしまっているものの、逆に話の締めがなんと綺麗なことか。
オマケとしてだが、算数のパズルのようなものも読み応えあり。
しかし、その1つの答えが明らかにされていない気がするが。(2006/02/04)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
−− 忍法「魔界転生」
この世に悔いがあって蘇ってきた名剣士達。
荒木又衛門、天草四郎、田宮坊太郎、宮本武蔵、宝蔵院胤瞬、柳生但馬守宗矩、柳生如雲斎。
彼らをまとめ幕府転覆を狙う、島原の乱におけるキリシタン軍の軍師・森宗意軒。
これに対するは柳生十兵衛。
前半は、7人の転生衆の復活。
転生衆の各々の視点から、この世を悔いて亡くなり復活するまでの流れ。
後半は、彼らと十兵衛の敵対。
十兵衛を仲間に加えようと目論む転生衆。
思わず十兵衛と敵対することになるが、圧倒的な勢力差を埋めるべく考え出した十兵衛の策。
先が気になる展開。
設定と次の展開にワクワクさせられる。(2006/01/02)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
ルールにより、十兵衛に対し一人ずつ戦いを挑んでくる転生衆。
転生して魔性に染まったことにより、力が上がった描写が何度かある。
そのせいかは分からないが、ほとんどが十兵衛より実力が上。
それを、策をもって、あるいは偶然によって、はたまた相手の油断により次々と打ち破っていく十兵衛。
が、これが逆にそれ程盛り上がらない。
盛り上がる戦いもあるが、意外とあっけなく終わったり。
先が気になってどんどん読み進めてしまうものの、あまり期待に答えてくれる展開ではない。
と言っても、総じてみると、かなりの作品。
結構面白く読め、最後も私的には満足。(2006/01/04)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
陰陽師・安倍晴明の話。 一応は時代小説。
といっても、作者が面白おかしく書いてるらしく、決して史実に沿っているわけではない模様。
さて、この小説、なんというか読みにくいのに読みやすい。
平安時代の話だから、今とは生活感も言葉も違っている部分があるし、最初はかなり読みにくいと思う。
だが、読んでるうちにいつのまにか引き込まれている。
登場キャラがかなり個性的なところと、キャラ同士の掛け合いが面白いことが、そういったことの要因となっているかと。
特に、晴明と源博雅が酒を飲みつつ話している場面がいい。
晴明は何を考えているかよく分からない男。
式神や呪を使うなど、そういった能力的なものも含めて、不思議な感じの男。
それに対して博雅は実直、正直者、分かりやすい男。
話を探偵物に例えると、晴明は探偵、博雅は助手か依頼人。
何も情報の与えられていない読者にとっては、博雅視点で話を読むことになるだろう。
そんなわけで、晴明よりも博雅に感情移入しやすく、あるいは博雅を主人公としてもいいかもしれない。
単に戦うだけの話ではない。
各話の序盤に晴明が話していたことが伏線となって、後の解説に説得力を持たせている。
いや、実に読み応えある。(2005/11/06)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
陰陽師・安倍晴明の話、2作目。
前作よりも、少し変わった話が多いような印象。
晴明が万能ではないことが思い知らされたり。
博雅中心の話もある。
晴明は相変わらずな感じだが、博雅はより活き活きと描かれていた気がする。
というわけで、この名コンビの物語。
今作も実に面白い。(2005/11/12)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
陰陽師・安倍晴明の話、3作目。
全七編を収録。
相変わらず面白い。
今作は、鬼となった人間の話が多い。
話の一つに、壬生忠見の話がある。
「恋すてふの壬生忠見」。
歌合せで詠んだ「恋すてふ〜」という自分の歌が、
平兼盛の「忍ぶれど〜」という歌に負け、悔しさから”食わずの病”になって死んでしまい、
成仏せずに鬼となった忠見。
1、2作目と、話に名前だけ出てきていた彼の話がようやく。
それ以外にも、晴明に匹敵するとされる陰陽師・蘆屋道満が登場。(2005/11/18)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
陰陽師・安倍晴明の話、4作目。
全6編収録。
多少変わった話が多いものの、ややマンネリ化しつつある・・・。
博雅を通して、妖ごとの問題解決の依頼が晴明にくる。
あるいは、晴明が依頼を受けた夜に博雅が飲みに来て、一緒に出掛ける。
こんな感じの始まりが多い。
今作の注目は、道摩法師こと蘆屋道満と晴明とで、方術比べをする話。
一言で言えば奇想天外。
手品のような術を互いに繰り出すので、一見の価値あり。
これはかなり面白かった。
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
陰陽師・安倍晴明の話、5作目。
初の長編もの。
いつもと違うところに掲載されていたものらしい。
そのため、舞台や人物の説明も詳しくあり、これから読み始めても問題ない作品。
話は、3作目に収録されていた「鉄輪」という話の長編版。
「鉄輪」を読んだ人は、予想しやすい展開だが、かなり変更がある。
様々なエピソードが追加されえおり、伏線も多く張られていて読み応えがある。
蘆屋道満も登場する。
終盤のシーンは涙を誘う。(2005/12/02)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− ヘイスティングズは旧友の誘いでスタイルズ荘に訪れる。
屋敷の女主人が毒殺されるのだが、密室や毒の作用する時間など様々な問題から、事件は複雑然としていた。
館の住人皆が嫌い、また犯人と疑う男の存在。
ヘイスティングズは友人、エルキュール・ポアロに事件の捜査を依頼。
二人は怪事件の謎に挑む。
アガサのデビュー作であり、名探偵ポアロが初登場する作品。
小柄で少し変わった紳士、元敏腕刑事のポアロ。
若い刑事、ヘイスティングズ。
二人の凸凹コンビは、見ていて面白い。
話はヘイスティングズ視点で進んでいく。
ポアロが推理した内容を焦らしたりて、なかなか話が進まない。
文章自体がやや読みにくかったりもする。
しかし、根気良く読むことが大事。
終盤、ポアロが全ての謎を解き、犯人を暴く瞬間はかなりのインパクトがある。
話全体の起伏が認識させられ、意外な展開に驚かされる。
最後の締め方が、すっきりした感じでとてもうまい。
事件後の人間関係の修復、発展を仕組んだポアロに脱帽。(2006/02/03)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−− 最近世間で注目されているインディアン島。
その島を買ったとされる人物から、年齢も職業もバラバラの男女8人が島に招かれる。
そこには、雇われたばかりの召使い夫婦がおり、彼らも主人にはまだ会ったことがないらしい。
夕食の時間、皆がくつろいでいるところで、突如謎の声が響き渡る。
その内容は、彼らが皆何かしらの殺人容疑があるというもの。
そして、ある童謡になぞらえたかのごとく、一人また一人と殺されていく・・・。
物語の最初から、視点となる人物が次々と変わっていき、いきなり惹きつけられる。
10人のインディアンの少年が、一人また一人といなくなっていく内容の童謡。
人がいなくなるにつれて、なくなっていく10の人形。
最近の推理ものでありがちな内容だが、この作品の方が古く、原点はこれかも。
何より、そういった演出が素晴らしく、どんどん読めてしまう。
この事件の犯人は誰か?
そういったことを推理するのは難しいが、むしろあえて出来ないように演出されているのかも。
渦中の人物達の恐怖や疑心暗鬼の心境も細かく描かれている。
文句なしに面白い。(2005/12/25)
総合評価:★★★★★ ★★★★★
−− 建築構造のねじれた家に住む大富豪一家。
その家の主人が毒殺される。
犯人はその一家の者であると予想される。
ねじれた心を持った住人達の、ねじれた関係。
館の主人の孫の婚約者・チャールズは、警察とのコネを使って、その家を訪れる。
特徴のある住人達。
彼らの証言も疑わしく、また明らかに秘密を握っている人物もいる。
淡々と進んでいく物語。
犯人は心が一番ねじれた人物。
探偵のようにいろいろ嗅ぎまわるものの、大した活躍のできない主人公。
やや盛り上がりに欠けるが、全体を通して飽きずには読める作品。(2006/02/03)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
探偵好きな老婦人ミス・マープル作品の一つ。
主に警察のニールの視点で進む。
−− 傲慢で、誰からも嫌われているであろう、ある会社の社長が、毒殺される。
その毒は、イチイの実のものであり、毒の性質や、社長宅にその木が生っていることなどから、
容疑者は、社長宅に住む家族や使用人しか考えられない。
誰もに動機があるが、その後、第2、第3の殺人が…、
各々の殺害状況が、ミス・マープルの言うように、ある歌になぞられていた・・・。
人物がよく描かれている。
特に、内面にある醜い部分が。
なんというか、登場する人物の大半が、ひねくれた性格の持ち主。
ただ、そこを分かってニール警部は捜査しているので、そこらも見所の一つかと。
どれも皆、容疑者のように見える。
最後の最後まで、犯人やトリックを暴くのは難しい。
だが、その「謎」の部分がまた面白い。(2005/11/21)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
−−人類が宇宙へ足を踏み出そうとしたその時、彼らは現れた。
地球文明よりはるかに進んだ科学力を持つ彼らは、しかし、人類に対してほとんど干渉しなかった。
ただ、人々が間違った行いをしようとすると、それを禁止し、また少しばかりの知恵も授けた。
人々は、その宇宙からの来訪者を、「オーバーロード」と呼んだ。
読んだことのない人に、この話の設定やあらすじを教えたとして、
おそらく「ありがちだ」とか「稚拙だ」とか、そんな意見が多く返ってくると思う。
だが、決してそんなことはない。
よく練りこまれた設定や、様々な場面での説得力のある言い回しなど、
むしろ非常にリアリティがある。
納得させられる。
実際にこのようなことが起こったとすれば、この話の通りになってもおかしくない気までしてくる。
オーバーロードの正体や目的など、最初は謎に包まれているし、そこも注目。
ところどころ伏線が張られ、特に中盤の伏線には驚かされた。
読み終えてから、タイトルの意味を考えてみるのも面白い。
しかし、難しい言葉も多く使われ、話の構成を含めて、かなり読みにくい。
私も全てを理解できていない。
子供が読んでも内容が把握できないかもしれないし、哲学的な話もあるので面白くないかもしれない。
ただ、ある程度知識がある人や、本を読みなれている人には、是非とも一読してほしい。(2005/11/25)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
ゲームとは、おそらく人生のこと。
人生をゲームに例え、それをいかにうまく生きるか、勝利者となるのか。
主人公は、そういった考えの持ち主なのだろう。
しかし、面白すぎる。
目まぐるしく変わっていく展開は、読み手を飽きさせない。
それどころか、続きが気になりすぎて、読むのをなかなか中断できない。
作者か翻訳者か分かりませんが、書き方がシンプルで読みやすい。
素晴らしい作品。
総括的な感想は下巻で。(2005/11/19)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
上巻ほどではないが、下巻もなかなか面白い。
様々な人の視点からの話が描かれているのがいいのかもしれない。
さて、少しネタばれを含んだ総括的な感想を・・・。
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ゲームの達人は、話の中で3人出てくる。
ジェミー、ケイト、イブ。
いろいろあるものの、最終的な成功者はケイト一人。
全体的に、ケイトが一番主人公っぽい。
話の最後、終わり方が微妙かなと思っていましたが、今思うとあえてそうしたのかな。
あの後は、読者の想像に任せる感じ。
ロバートが、トニーと少し似たような子供だと感じた。
親はトニーの味方ですが。
ケイトがあれだけこだわっていた会社の相続について、あきらめたと見るのか否か。
トニーの一件から、強引なやり方はしないことにしたのか。
人生というゲームの勝利のために、自分の意思を信じるのか。
あと、思ったことといえば、この話からの教訓かな。
・あまり人を信じすぎてはいけない
・正直になりすぎるのは、足元をすくわれる
・自分の力を信じる
・ただ、人の尊厳を踏みにじるようなことをすると、後で返ってくる
多少こじつけな部分もあるし、これを信じすぎるのもどうかと思うが、
教訓となるような意味もこめられていたのではないかなと。
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読み終えてから、上巻のプロローグを改めて読み直してみるのも面白い。
(2005/11/20)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
映画ロードオブザリングの原作。
かなり昔に書かれ、翻訳版も発売され、数年前に新しいデザインで再販されたのがこれ。
中身は同じっぽい。
−−ホビットと呼ばれる体の小さな種族の青年(?)フロドが主人公。
フロドの叔父・ビルボから託された「一つの指輪」。
それは、世界を滅ぼす魔力を秘めた指輪だった。
指輪を葬る方法を求め、フロドは旅に出る。
かなり省略したが、あらすじはこのような感じ。
翻訳者のせいかは分からないが非常によみにくい。
古い感じの台詞回しや、やたらに比喩が多い情景描写。
慣れないうちはかなり疲れると思う。
特に最初の数十ページは設定的な内容であって、かなりの情報量に頭が混乱するかも。
だからといって読み飛ばせるものでもない。
辛抱強く半分ほど読み進めていくと、ようやくましになってくる。
なんとか続きが気になる程度には面白くなってくる。
前半は評価5、後半はかろうじて7。
間をとって6とした。(2005/12/09)
総合評価:★★★★★ ★☆☆☆☆
あいかわらず読みにくいことは読みにくい。
が、だんだんと面白くなってくる。
本格的に旅立つことになるが、フロドに3人のホビット・サム、ピピン、メリーがついてくる。
数々のピンチや、旅を助けてくれる様々な人。
第2の主人公ともいえる、人間のアラゴルンの登場。
上1と比べれば山場も多く、それなりには面白いし、読み応えもある。(2005/12/09)
総合評価:★★★★★ ★★☆☆☆
−−最初の目的地・裂け谷に到着したフロド達は、思い焦がれた連中と再会を果たす。
裂け谷に住むエルフ族の主・エルロンドの館で、指輪の処遇を巡って会議が開かれる。
指輪を葬る唯一の方法、それはモルドールの火の山に指輪を投げ込むこと。
しかしモルドールは、冥王サウロンの住む場所。
この危険な旅にフロドは、選ばれし仲間達とともに、9人で旅立つ。
また旅を続けることになるのだが、旅の仲間も増え、
しかも人間、エルフ、ドワーフ、ホビットと複数の種族で構成される。
各種族の思想や特徴だけでなく、それぞれのキャラもなかなか個性が出てきている。
頼れる仲間が増えたことで、心強い旅になるのだが、逆に危険が大きなレベルのものになってくる。
全体的なスケールがだんだんと増していき、これまでの細かな設定もかなり味が出てくる。(2005/12/10)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
9人での旅の続き。
だが、いきなり大きな事件が起こる。
苦難を乗り越え旅を続けていく。
苦難の後に平穏、そしてまた苦難と、メリハリが出てきている。
苦難ばかりだと読む側にとっても息つく暇もないが、
平穏の地・ロスロリアンでの休息と旅立ちの場面がいいクッションになっている。
戦闘の場面も増えていく。
第1部「旅の仲間」はこの巻で終り。
最後の場面に注目。
巻が進むにつれて、続きが気になる。
面白くなってくる。(2005/12/10)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
今巻から旅の仲間が3つのグループに離散してしまう。
メリーとピピンがオーク達にさらわれ、救出のためにアラゴルン、レゴラス、ギムリが追いかける。
フロド達の出番はなし。
大ピンチのピピン達。
必死に追いかけ、また追跡に関して頭を冴え渡らせるアラゴルン達。
オーク達の感情や立場。
新しい種族と、新しい団体。
どんどん面白くなってくる。
読んでいて思ったのだが、この話は、最初は童話のような雰囲気を持っていると思った。
が、読み進めていくと、なんだか劇を見ているような感じがしてくる。
そう思いながら読んでいくのもいいかもしれない。(2005/12/14)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
アラゴルン達とローハンの騎士達 VS オークと褐色人の軍勢
アイゼンガルドのサルマンの住む塔・オルサンクの攻略
やはり戦いの場面は面白い。
アラゴルン達とピピン達(エント達)は、離れてはいるものの目的は同じ。
片方の話を見ていても、もう一方がさりげなく関係していたり、伏線に驚かされる。
今巻もフロド達の出番はなし。(2005/12/15)
総合評価:★★★★★ ★★★☆☆
うってかわってフロドとサムに焦点があてられる。
二人の辛い旅路。
追いかけてくるゴクリ(スメアゴル、映画ではゴラム。こっちが本当の名前かも)。
ボロミアの弟・ファラミアと、ゴンドールの騎士達との出会い。
など、冒険が続く。
フロドの強い意思と勇気から成長が伺えるし、ゴクリもなかなかいいキャラをしている。
が、今巻の見所は、なんと言ってもサム。
サムの活躍が素晴らしく、これにはかなり驚かされた。
冒頭から語られていたホビットの底力を思い知らされた。
これだけで評価を少し上げようと思った。
先が気になる終り方で、褒め言葉として、いやらしいと言っておこう。(2005/12/18)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
前巻のフロド達の気になるシーンから、またまた場面は他の連中に。
舞台は終にゴンドールへ。
旅の仲間達だけでなく、多くの戦士達が集う。
見せ場は、ゴンドールでの指輪戦争。
エオウィンとメリーの活躍。
ゴンドールの民が待ち望んだ王の帰還。
そして最後の戦いに向けての遠征。
物語も終盤。
最も多くの登場人物が入り乱れる戦争の場面は圧巻。
ピンチに続くピンチに、助けに来る味方達。
思わずニヤッとさせられる。
今巻もいいところで終わるのが憎い。(2005/12/21)
総合評価:★★★★★ ★★★★☆
最終巻。
旅路で最も苦難の場面に差し掛かるフロドとサム。
サムの主人を思う心と、必死になって助ける様は、涙が出そうになる。
滅びの山での使命達成の場面、指輪の魔力、ゴクリ(スメアゴル)の役割。
これには感心させられたというか、うまい展開と感じた。
恐怖が去り、皆の喜びと、仲間達との別れ。
主な登場人物達について、非常に細かく書かれており、最後の締めくくりとして内容は十分。
全巻を通じて、読めば読むほど面白くなっていく。
最後の場面は、賛否両論があるかもしれないが、私的には満足のいく終わり方だったと思う。(2005/12/23)
総合評価:★★★★★ ★★★★★
−−チャーリイ・ゴードンは知能が遅れている32歳の男性。
彼はある研究に協力している。
この研究が成功すれば、彼のような人達の知能を高くすることができる。
ネズミのアルジャーノンには、手術によって高い知能を得ることができた。
チャーリイは、人間では初めて手術を受けることになる。
人より劣った知能を持っているとする。
周りの人は、自分のことをどう思い、どう扱うだろうか。
自分は、他人をどう思うだろうか。
逆に、自分が人より優れていた場合はどうだろうか。
人より劣っていた自分が急に、人より優れた存在になった場合、自分は、他人は、どう感じるだろうか。
逆はどうだろうか。
その1例が、この話なのかもしれない。
だいたい8割を読んだ辺りでは、評価をどうするか決めかねていた。
おそらく、読む人によって感じるところがかなり違うだろうと思ったからだ。
チャーリイの苦悩、周りの人間の苦悩。
主要な登場人物のほぼ全ての心情が描かれており、様々な人の立場に自分を置いてみることができる。
けれど、最後まで読んで、読み終えて、私の評価は文句なしに10。
この作品が面白いとか、暗いとか、感動したとか、泣いたとか、そんな単純な言葉で表すのは難しい。
何も考えずに、頭をからっぽにして読んでほしい。(2005/12/03)
総合評価:★★★★★ ★★★★★